「インターネットを活用した国際理解教育の現状調査」

〜小中高ホームページの調査研究〜

International Education through Internet

-A Survey of Home Page Contents by Elementary and Secondary Schools in Japanー

9351175 三浦 実知子

鈴木 克明先生指導

1. 研究の背景

 ユネスコは1974年の第18回総会において、「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育ならびに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」(略称「教育勧告」)を採択した。勧告はこの教育の名称として「国際教育」と定めた。ここでの国際教育で取り上げるべき諸問題として、平和・人権・開発・環境などに関する諸問題をあげている。これらを扱う教育については、それぞれ平和教育・人権教育・開発教育・環境教育となり、国際教育を展開している。

 国内においては、1974年5月に「国際理解教育」についての教育政策が、はじめて出された。ここでは、「小・中・高等学校における国際理解教育の進行のために教育内容・方法を改善するとともに、国際理解のための実践的活動を行う場の拡大についても考慮すること。」とある(原田・赤掘 1992)。

 また、第15期中教審では、さらに「国際理解教育」について推進していく立場が明確にされている。その中で、国際化の状況に対応し、教育を進めていく上での留意点として、(1)広い視野を持ち、異文化を理解すること。(2)日本人として、自己の確立を図ること。(3)外国語能力の基礎や表現力等のコミュニケーション能力を図ること。の3点が上げられている。

 国際理解教育を進めるにあたって、上述されたことに注意して、実りあるものにするためには、実践的な態度や資質、能力を育成していく必要がある。そのためには、国際的な情報通信ネットワークの活用をはじめ、様々な機器や教材の活用などが考えられる。現在、多数の学校では、インターネットを活用して、ホームページを作成し情報を発信している。 

 そこで本研究の目的は、小中高の「国際理解教育」として位置付けられているホームページの現状を明らかにし、さらにユニークな実践を紹介していく。

2. 調査の概要

(1)調査対象

 研究対象のホームページは、市川・鈴木(1996)「小中高ホームページの調査研究」で収集されたものを活用した。

(2) 調査方法

 まず、ランダムに小中高のホームページを各10校ずつ参照した。そこから「国際理解教育」と思われるカテゴリを、ユネスコや第15期中央教育審議会第一次答申を参考にして決定した(表1参照)。そして、カテゴリとその内容を照らし合わせながら各学校のホームページをひとつひとつ検証した。

3. 調査結果

 調査結果は、表1に示す。

 表1.国際理解教育の調査結果

項 目 高 
留学 1 1 31 33
ホームステイ 0 3 15 18
姉妹都市・姉妹校 4 8 15 27
国際交流 19 25 40 84
海外修学旅行 0 0 13 13
外国語教育 2 3 35 40
帰国子女教育 3 6 8 17
英語表示 20 49 68 137
平和教育 5 11 12 28
人権教育 5 4 3 12
開発教育 9 3 4 16
環境教育 25 32 23 80
93 104 267 505

 調査の結果、小学校175件、中学校158件、高等学校249件の計582件のホームページを検索した。そのなかで、「国際理解教育」に関するカテゴリが一つでも見つかったホームページは、小学校で67件(38.3%)、中学校で76件(48.1%)、高等学校で132件(53.0%)であった。また、1校につき小学校ではおよそ1.4個、中学校ではおよそ1.4個、高等学校ではおよそ2.0個のカテゴリが見つかった。

 ここで一番多いカテゴリは、圧倒的に「英語表示」であった。どの校種においてもホームページを世界のインターネットに発信しているという意味で、日本語の他に英語の表示をしている。特に、中学校では英語教育の始まりがほとんどのためか、約36.5%の割合で英語表示に取り組んでいる。逆に小学校においては約19.7%と低い。

 次に、「環境教育」が多い。ここでは、小学校で約27.6%と割合が高い。内容としては、小・中学校では身近な環境問題を理科や道徳の時間に取り上げたり、高等学校ではグローバルな視点で世界の環境問題をテーマを決めて生徒たちで意見を交換することが多くみられた。

 あらゆる機会を通じて、異なるものに対し、積極的に関心を持ち、理解し、これを受け入れる「国際交流」は、どの校種においても同じ割合で行われている。大部分の学校で行われているのは、外国の学校とE-mailや手紙やFAXで交流したり、外国からの転入生を紹介したりして、それぞれの国々の文化や教育を知ろうとしている。

 「外国語教育」については、高等学校で盛んである。積極的に「コミュニケーション能力の養成」をめざした英語教育に力を入れている。たとえば、AET制度やESL制度を取り入れている。

 そして、「留学」。これはまだまだ小中学校には浸透していない。留学も多様化し、期間、形式、資格、留学先などの点でバラエティーに飛んでいる。特に、姉妹校との交換留学や長期休暇を利用した希望者だけの短期留学を実施している高等学校が多い。

 「姉妹都市・姉妹校」は校種によって差がない。姉妹都市・姉妹校になっている地域や学校では、主に「児童・生徒の派遣」「留学生の派遣」「スポーツ交流」等の交流が盛んである。

 戦後50年の年であったために広島県、長崎県、沖縄県の小中高等学校の他にも全国の小中高等学校で「平和教育」が多く実施されていた。「平和教育」の行われている割合は、小学校で7.5%、中学校で14.5%、高等学校で9.1%、と中学校で得意なようだった。

 国際交流活動の一旦として注目を浴びている「海外修学旅行」は、高校で最も盛んであった。国際理解・国際親善を深める目的が最多で、韓国、中国、台湾の順で多く行かれている。

 「開発教育」に関しては、小学校で積極的に取り入れているようだ。主に、「国際ボランティア」に多く見られる。たとえば、開発途上国に援助するためにあき缶を回収して募金をしたり、ユニセフに募金をしたり等があげられる。

 もっとも国際理解教育として少ない「人権教育」の内容は、被差別部落に対する学習にみられた。

図1.広島市立長束小学校の平和教育

図2.奈良県立高取高等学校の国際理解教育

4.特色あるホームページ

 奈良県の高取高等学校では国際理解教育について

あらゆる分野に取り組んでいる様子が伺えた。アメリカ姉妹校との交流や留学生の体験などから得られた国際理解教育のさまざまな成果を一部ではあるが、詳しく紹介している。

 広島県の長束小学校では「平和教育」が盛んであった。沖縄県の天願小学校と平和メッセージの交換をしたり、千羽鶴プロジェクトに参加して各国から千羽鶴が届けられたりする様子を紹介している。

 「人権教育」は、西日本の学校で多くみられた。大阪府の西淡路小学校では、人権学習という授業で被差別部落について学んだり、朝鮮人子ども会に参加しての意見等をのせている。同じく、大阪府の萱野小学校では、世界的な視野で人種問題についてや子どもの権利についてを児童たちで考え、意見をのせている。

 

5.まとめ

 国際理解教育としてのホームページに多く実施されていたのは、小中高のどの校種においてもまだ国際交流活動の段階にとどまっていた。しかし、ユネスコ『教育勧告』には、国際教育でとりあげるべき諸問題として、平和・人権・開発・環境などに関してグローバルな視点からの諸問題をあげている。

 今後、国際理解教育自体をはっきりとした学習内容を充実させ、さらにホームページの内容を、全世界的視野のなかで作られていくこと望ましいと思われた。

◇参考文献

市川 尚・鈴木 克明 1995 「WWWホームページはどのように設計したらよいか?」『IMETS』120号、24〜32

原田 種雄・赤掘 侃司(編) 1992 『国際理解教育のキーワード』 有斐閣


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