宅建試験における権利関係編を扱ったCAI教材の設計と開発

-OCRとインターネット上で得たテキストデータの利用-

Development of CAI Courseware for Realestate Agent's Qualification Test

-Use of the Text Data using the OCR and from the Internet-

9351166 林 繁光

鈴木克明先生指導

1. 研究の背景

 大量の情報を処理しようとした時、どのように加工すれば効率的かという事を誰しもが考えると思う。そこで今回CAI教材を作製していく中でこの問題を解決する一つの方法を提案し立証することを試みた。大量の情報として用いたのは、宅地建物取引主任者資格試験を突破するために作製されている本(藤村・小俣、1995)の中の「権利関係編」にした。なぜなら、個人差もあるだろうが、この分野だけを学習し終えるのでさえ最低半月はかかる程の膨大な量がこの教材の中で扱われているからだ。

 宅地建物取引業を営むためには、国家試験である宅地建物取引主任者資格試験に合格しなくてはならない。試験日は年一回10月の第三日曜日で、午後1時から3時で行われており、4肢択一方式の問題が50問出題される。その内「権利関係編」からの出題は例年15題程度である。 

 CAIとは、(Computer Assisted Instruction)の頭文字をとったもので、文字通り訳せばコンピュータによって援助された教授ということになる。CAI教材の特色を一言で書けば、利用する人の学習効果を手助けする役割を担っている。今回CAI教材にする理由として、法的な用語、解らない言葉を即座にだすためということがあげられる。

  OCR(Optical Character Reder)とは、コンピュータにプログラムやデータを入れるための入力装置(input output unit)のことであり、キーボード、パターン認識技術による光学文字読み取り装置である。作製した教材中で、使用しているテキストの大半は、この装置によって入力した。また、教材の中で使用している一部のテキストデータはインターネット上に存在する検索会社(TITAN)を利用し、「民法」というキーワードで検索した結果得られた「日本電能法律集」というホームページ(URL=http://j_ law.l.kanazawa-u.ac.jp/DOC/v6.html)から獲得した。

 本研究では、市販されている参考書の約3/5と問題集(住宅新報社、1997)の約1/4をOCRによって取り込んだ。取り込む事は完全に著作権に違反した行為であるので、完成した教材は大学内でのみ研究用にしか用いることはできない。インターネットで得たテキストデータに関しては、広く開放されている物なので問題ないだろう。

 本研究では、大量のデータを扱う教材を作る1つの方法としてOCRとインターネット上で得たテキストデータを利用することで、効率的な教材開発を試みた。

2. 設計

 教材の全体構成は、図1に示すとおりである。

「学習」コースは、26章の「テキスト」とそれに付随する「章末問題」で形成される。「テキスト」の中の解説の文字がタイプされたり、条文や用語をクリックすれば、即座に画面上に表示する機能を付けた(図2参照)。「章末問題」では、その章に関する問題だけを扱い、学習者の意思で取り組めるようにした。

  図2 教材の画面例(テキスト)  

  「模擬試験」コースには、「分野別問題」と「実践問題演習」がある。「分野別問題」では、学習コースにおいて何章かにまたがる複合問題を扱い、1題解く毎に解答・解説を出すようにした。一方、「実践問題演習」では、国家試験の形式通りに出題数は15題、時間は36分と制限し、マークシート形式の解答欄に解答後、解答ボタンで解答をする(図3参照)。もし時間切れの場合は、終わっているところまでで解答するようにした。解説は、学習者に効率良く学習してもらうため、見たい問題の番号をクリックして見てもらう。また、合格基準点を設け、10点以上とし、基準点に達した時はファンファーレが鳴る機能を付けた。

  図3 教材の画面例(実践問題演習)

 

 「その他」コースでは、「民法」と「その他の条文」、そして「用語集」を眺められるようにした。

3. 開発

3-1.開発環境

 本教材は、本学の4号館4階教育工学実験実習室のPower Macintosh 6200/75 を使用し、ソフトはHyperCard2.2jにより開発した。プログラムは、HyperCardをプログラムする為の言語であるHyperTalk2.2を使用した。OCRは、テキストをPICTファイルとして保存する為に使用し、E-typistは、そのファイルを文字に変換する為に使用した。

 教材開発は、まず最初に本と問題をOCRで約650ページ程PICTファイルとして取り込んだ。そのファイルをE-typistで認識させた後、ヒット率(認識率)平均70%強のものを自力で手直しした。また、それと平行してE-typistで認識できなかった図をカードに描いていった。さらに、インターネット上で見つけた民法並びにその他の条文は、ワードとなる番号を条文1つ1つに付けフィールド上でグループ化した。以上の材料を基にプログラムを組み、本教材のプロトタイプを作製した。チーム内の評価で改良版を得た後、それを基に本教材を作製した。

3-2.検索ツール(条文、用語)

 テキスト上で出てくる「(法」で始まる条文名をすべてグループ化し、「(」と「法」という2つのワードを手がかりに違うカードに保存してある条文を呼び込み、枠に入れている。用語にも仕組は同じだが、「[」から「]」までをキーワードにしてその中の文字をボールド表示することで学習者が認知できるようにした(図2参照)。

3-3.テキストをフィールド上にタイプするツールと図を呼び込むツール

 タイプツールはフィールドを2枚用意して、まず一枚目のフィールドにテキストをボタンで入れる。それを一文字ずつ2枚目のフィールドに送ることで、タイプしているように見せている。

 図のツールは、キーワードを基に違うカードに書かれた図の座標の範囲を指定してカット&ペーストした図を現在のカードにコピーすることで、フィールド上には描けないことを克服している。

3-4.実践問題演習に用いているツール(問題選択、マークシート方式、解答、時間制限)

 実践問題演習では、最初に約200題の問題の中から、15題が選択されて模擬試験が始まる。解答者が違う問題を選択をしたい時は、問題番号をクリックする事でその問題を枠に呼び込むと同時に呼び込んだ問題の番号はハイライトの状態を保つようにした。こうすることで、解答者が現在何番目の問題を解いているのかが認識できるようにした。

 マークシートは4択だが、1つしか選べないようにしている。答えを変える時は、変えたい番号の上をクリックすれば、現在の答えのハイライトが消えて、新たな番号がハイライトされる。

 解答は、あらかじめ約200題の問題の解答をフィールドに入れておき、解答者の答えのフィールドと解答フィールドを対応させて、当たっていたら「○」を間違っていたら「×」をいれて「○」の合計をカウントさせ正解数を出している。

 時間は、画面右上に表示されていて(図3参照)1分ずつ減り、時間切れで「ドカン」と鳴る機能をつけた。

4. 終わりに

 本来ならば評価実験として、被験者をCAI教材と準拠している本の両群に分けて取り組ませ、学習効果について2つの差を検定し、設計と開発の是非を問わなくてはならない。今回の場合は、開発に時間をとられてしまいそこまで出来なかった。そこで、評価実験の計画とそのために必要な材料を添付し、今後の研究に委ねることとする。また、本教材を大量のデータを扱う時の枠組み(ドリルシェル)として独り立ちさせることが可能かどうかを確かめることも今後の課題である。

主要参考文献

藤村和夫・小俣要一(1995)『パーフェクト宅建』 住宅新報社

住宅新報社編(1997)『宅建資格試験問題集』 住宅新報社


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