学校におけるコンピュータ普及の現状とこれからの課題

The present status and the future of computer utilization

for school education

9351125 木村 由

鈴木 克明先生指導

1.はじめに

もはや「導入」の段階を超えた、学校のコンピュータは、特に授業においてどのように利用されているのか。また、それに関わる問題点を克服する方法とは何か。実践を数多く取り上げ、現実のコンピュータ授業の姿を押さえ、それらを踏まえた今後の展望を考察する。

 

2.テクノロジーの変化と情報教育の歩み

2−1.テクノロジーの発達

ここ10数年のメディアの発達は目覚ましいものがあった(土屋、1994;宮路、1989)。始めは一部のマニアにしか縁のなかったコンピュータが、90年代に入り、低価格・高性能のマシンがどんどん普及し始め、現在ではマルチメディアパソコン(MPC:CD-ROMや高性能のAV機能が標準装備されているものを指す)が、家電と同じ勢いで社会に進出している(土屋、1994)。

現在は、政治的な存在にまでなってしまったコンピュータであるが、今後は通信面とAV機能の充実が期待されている(浜野、1993)。

2−2.情報教育の歩み

情報教育は、「自己教育力の育成」を基礎として、「マイコン教育元(1985)年」からのニューメディア利用計画や情報リテラシーの育成という視点から、1980年代になって重要視されるようになった(文部省、1990;石桁、1992)。しかし、当時コンピュータに十分触れる環境にあった教師も生徒もいなかったので、それ自体がリアリティに欠けていた(市川、1994)。

「マイコン教育元年」からは10年が過ぎていることになるが、実際にコンピュータが身近なものになったのは、ここ2〜3年である。「100校プロジェクト」(鈴木、1995b;IPA・CEC、1994a)などの実践を機に、ネットワーク技術など、コンピュータの長所を活かした教育が期待されている。

 

3.コンピュータ利用の学習とは何か

3−1.コンピュータの特徴

コンピュータにはさまざまな特徴がある。例えば、シミュレーションやバーチャル体験が可能(田中、1996;高島、1995)、個を活かせる(宮路、1989;高島、1995)、インタラクティブである(西垣、1994)ということなどである。これらの特徴を活かせば、学問的要素になりうるヒント(谷川、1990)として活用していけるであろう。しかし、それを学習の場で使用する場合、適する内容とそうでないものがある。コンピュータ以外のメディアの方が学習しやすいものもあるし(浜野、1993)、運動技能(鈴木・井口、1995)はバーチャル体験だけでは習得できない。

コンピュータをただ使ってみるというだけでなく、その長所といわれることをよく吟味して、授業に十分発揮できるようにすることが求められている。

3−2.コンピュータ利用の学習について

コンピュータを授業で活かすため一つの例として、CAIという方式が挙げられる。CAIとは、コンピュータの助けを借りて、個別の能力にあった学習指導を効果的に行うためのものであり、その用途別に、主にドリル演習型、チュートリアル(個別教授)型、問題解決型、シミュレーション型、情報検索型に分類されている(宮路、1989)。

また、最近ではネットワークなど、学習環境としても活かされるようになってきている。このネットワーク化された学習の中の一つに、CSCW(Computer Supported Cooperative Work)と呼ばれるものがあるが、これはCAIとは対象的な要素を持つものである(浜野、1993)。

それ以外にも、データベース作成や創作・表現のためのツールとしての活用、実験補助や授業の補助としての活用、また、何の目的もなく「ただ、置いてみる」という利用の仕方も見られる。

利用についての事例をもとに現在のコンピュータ利用学習を分類すると、小学校では圧倒的に創作・表現のための道具としての活用が多く、高等学校ではインターネットを用いた情報検索によく利用されている傾向がみられる。また、結果や成果の記述されていない事例も多く見受けられた。

 

4.授業への利用の実態・実例

4−1.研究指定校

何らかの形で研究指定を受けている学校の取り組みは量・質共に充実している。

大衡村立大衡小学校での、児童のコンピュータに対する姿勢はいたって自然で、遊びながら勉強できる便利な道具といった感覚のようである(大衡小学校、1996)。

仙台市立第一中学校では、自作ソフトを積極的に作製し、使用している。1995年に行われた公開授業では、通常の授業と分科会の他に、ソフトウェア展示会(CAI屋台村)を開いた(仙台一中、1995)。

北海道旭川凌雲高校では、インターネットを中心とした、広域学習環境としてのコンピュータ利用が積極的である(旭川凌雲高等学校、1996)。

4−2.指定以外の一般校

指定校とは違い、教員が自分の教科の時間内だけで行っている実践である。

仙台市立片平丁小学校では、ある教師が、独自でコンピュータを教室に持ち込み、どのような利用法があるかを模索した(鈴木他、1995)。

日立市立駒王中学校では、中3技術科の「情報基礎」の授業で、表計算ソフトの使い方を学習した。

東京都立八丈高校は高3の選択科目で「情報基礎」と「情報数理」という授業を行っている。その「奮闘記」とも言える実践例が、日記風に公開されている(清水、1996)。

4−3.実践例からわかったこと

指定校と一般校での取り組み方の差、またそれに関わらない学校や教師ごとの違いがあった。差や違いが生じるのは、学校の抱える根本的な問題や無理なプロジェクトが関係しているのではないか。

 

5.コンピュータ普及を妨げる問題点

5−1.「指定校」と「一般校」

研究指定校の実践には、確かに量・質共に充実している。これらの学校というのは、先に述べた問題を、学校独自で工夫しつつ、クリアしているところもある。しかし、ほとんどは問題を抱えたままだったり、一部の教員の過重な負担の上に成立している(文部省内「学校教育とコンピュータ」研究会、1987)のが現状である。本来は一般校への推進のモデル校であるはずの学校が、特別な学校であり、また指定という圧力がないと推進できないプロジェクトなら普及させるのに無理があるのは当然のことである。

5−2.コンピュータ以前からの問題

学校や教師には、コンピュータが導入される前から存在する問題がある。それは、学校が、さまざまな面で行政サイドの規制を受けてしまうこと(岩田、1995)、学校の意識や方針が外部に対して開かれたものでなく(岩田、1995)、異質を排除する文化風土が支配している(TESS研究会、1991)ということ、教師は教材研究に時間を割けないということ、自分の授業には不可侵であるという気持ちが強いこと(谷川、1990)、生徒は受動的な学習に慣らされてしまっていること(安井、1986;高島、1995)などである。

5−3.コンピュータ普及方略の必要性

コンピュータ普及の現状は問題が山積で、四面楚歌のようにも思える。その状態を打破するには、指定校を作ること以外の方略を考える必要がある。

 

6.学校へのコンピュータ普及に対する提案〜研究のまとめにかえて〜

6−1.コンピュータの可能性と利用の実態

ここ10数年でテクノロジーが発達し、情報教育も重視されるようになった。それに伴いコンピュータの利用も活発になってきたものの、さまざまな問題があり、ただ導入しただけでは、普及しない。

6−2.コンピュータ普及方策の提案

コンピュータを有効に利用するには、課題を解決する環境(道具、仲間、教師)が整っていることが大切である(市川、1994)。具体的には、道具は気軽に触れられるものを置き、仲間は個性や創造性を伸ばし合うような雰囲気を心がけ、教師は多様な価値観を持ち(市川、1994)、伝統的な授業の捉え方にとらわれない、ということである。

6−3.コンピュータ導入の目的

教育工学的な視点から考えると、ニューメディアの導入とは教育における慣習への挑戦であるといえる(東、1976)。まずはコンピュータを使ってみよう、と考えることがこれまでの閉鎖的な授業(鈴木、1996)を考え直すいい機会になる。「なにも教師だけが教師ではない」(佐伯、1995)のだから、「自分の授業を少しでも<マシ>なものにするために、使えるモノは何でも」(鈴木、1995a)使って、よりよい授業が展開されていくことを期待したい。

<主要参考文献>

鈴木克明(1995a)『放送利用からの授業デザイナー入門』日本放送教育協会

高島秀之編(1995)『マルチメディア教育』有斐閣

TESS研究会編(1991)『学校と教師』学術図書

浜野保樹(1993)『マルチメディアマインド』BNN


戻る