学歴社会における教育の諸問題と教育改革の展望

The Educaitional Problems in the School Career Society
and an Outlook of Educatinal Reform


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9551132 佐々木友宏
鈴木克明先生指導




はじめに


 日本の社会は学歴社会であると言われている。いい高校、いい大学に入っていい就職をするために、若いときの貴重な時間を削って、受験のための知識を詰め込み、熾烈な受験競争をくぐりぬけなければならない。この学歴社会の下で行われている入試中心の教育や、偏差値による教育によって現在多くの弊害が生じている。一方今日、この学歴社会が引き起こす様々な問題を早急に解決しようと、文部省を始め国立 、私立の大学でも多くの教育改革が試みられており、また様々な改革案や構想が立てられている。

 この論文では、文献研究を通して、第一章では学歴社会が誕生した背景、また現在の学歴社会の問題点を調べ、これからの教育改革にはどのような方向性が求められているのかに迫る。第二章では企業の採用の制度、入試制度、大学の教育制度の問題点をとりあげ、この問題を解決するために実際に行われている企業の採用の改革、大学の教育制度の改革、入試制度の改革に迫る。第三章では、入試制度、大学の教育制度の問題点をふまえ、教育制度について、自分なりの改革案を提案する。


各章の要旨

第一章 学歴社会の背景と教育改革の必要性


ー学歴社会の背景ー


 学歴社会とは、人間の社会的地位や収入さらには評価までもが学歴によって決められるという社会のことである。学歴による出世や賃金の格差、世間の見る目の格差など、学歴社会の風潮が強く残っていると言える(小宮山 1993)。

 身分制度が決まっていた封建社会はまだ学歴社会ではなかった。本人の能力とは関係なく社会的身分や経済的地位、門地などによって人間は評価される身分社会であった。明治維新によって、日本は近代国家をめざし、資本主義社会をつくりあげるため教育改革が行われ、東大を頂点とし、7つの帝大を中心とした複線的な学校制度がつくられた。このころから高学歴を身につけた者に対し、非常に高い賃金が支払われるようになり学歴社会が誕生した。

 学歴社会が一般の社会に蔓延していったのは戦後のことである。学校制度が戦前と比べ単線化となり、小学校ー中学校ー高等学校ー大学と一直線につながった制度になって、誰もが大学に進学するチャンスを得ることが可能になったこと、驚異的な高度経済成長を成し遂げたことにより国民所得が増大し教育費を払うだけの余裕ができたこと、また学歴による格差が国民全体に広まるようになったことなどが重なって、多くの人々が大学進学を目指すようになり、激しい受験競争をともなう学歴信仰の社会が生じることとなった。


ー教育改革の必要性ー


 現代の日本は、高度経済成長という時代を乗り越え、明治時代から突き進んできた工業化=物的大量生産の時代から情報化、国際化の時代へと変貌してきている。日本の工業化時代での教育は、個性を封じ込め、チームワークと標準的な技能や知識を学ぶための画一的な教育がなされてきた。しかし、現代は物の豊かさは十分に達成し、これからの情報化、国際化が進む社会において、創造性や多様性、個性といったものの追及が、教育の大きな目的になってくると指摘されている(加藤 1992)。

 実際に、今年文部省が出した学習指導要領では、学校が創意工夫を生かし、子供たちが自ら学び、考え、主体的に判断するような時間として総合的な学習の時間が新設され、改定案は2002年から実施されることとなった。このように、時代の変化とともに教育も大きな変化を見せようとしている。学歴に偏重した社会は、多くの教育改革によって今変わろうとしている。


第二章 教育制度の問題点と実際の改革


ー企業の問題点と改革ー


 学歴社会が発生した大きな原因として、企業の採用の方法がその人の最終学歴と学校歴を重視した基準を用いてきたことが挙げられる。この学歴重視の採用方法が、どんな企業に入社するかを巡る中学生もしくは小学生からの長くて厳しい受験競争を引き起こす大きな原因となってきたのは事実である。

 しかし、現在の長い不況の中で、各企業は大規模なリストラを行い、終身雇用、年功序列は崩れてきている。これからの新時代を見据え、企業の採用の方法が学歴を重視する採用方法ではなく、人物を重視してじっくりと時間をかけ採用する方法へと変化している。就職協定が廃止され、長い時間をかけてじっくりと面接が行われるようになったことや、ソニーや トヨタなどの一流の企業でも応募者の学歴を問わない入社試験が行われていることなどにも、採用方法の変化が現われている。学歴社会の最終関門である就職の変化によって、いい大学を出たからいい企業に入れるというこれまでの学歴重視の考えもこれから大きく変わってくると考えられる。



ー大学入試の問題とその改革ー


 日本の入試制度の方法は主に、受験のために詰め 込み式で記憶した知識をペーパーテストによって問うものであり、点数の高い順から機械的に入学者を決めるというものであり、個性や人柄は考慮されない。このような記憶した知識=実力と考えられている選抜の方法が現在様々な批判をあびている。  

 この入試の問題点を解決すべく、今年の7月に有馬文相が大学入試センター試験の抜本改革について中央審議会に諮問した。そのなかで知識の量だけではなく、多様な個性や能力を適切に評価することの必要を説いている。実際にこのような考えを入試に取り入れている大学もあり面接で評価する慶応大学の AO入試や、立命館大学の特別選抜入試などが注目を集めている。



−大学の問題点とその改革−


 現在の日本の大学は入るのは難しいが出るのは簡単である。向上心に富む学生は別として、遊ぼうと思えばいくらでも勉強の手抜きができ、何も身につけないまま卒業できるというシステムは問題である。この問題に対し、今年10月に出された大学審議会の答申では、学部卒業を厳しく認定する「出にくい大学」への転換がうちだされた。早ければ2000年入学から大学卒業が狭き門 となる。

 一方で、文部省の試算では、18歳人口の減少から2009年度には計算上入学志望者が全員大学に入学でき、大学が淘汰される時代が訪れる。入学志望者を確保するためにも大学教育の中身も改革を迫られている。また、このような変化を先取りして、厳しい成績の判定を行っている青森公立大学や、 アメリカの大学の制度をいち早く取り入れた、慶応大学のSFCなど、大学における教育改革が試みられ始めた。


第三章 教育改革の展望と教育改革私案


 現在叫ばれている教育改革において最も改革の重要性が指摘されている、大学の入試制度と教育制度についての改革私案を提案する。学生の「個性」を重視する選抜方法、学生に「実力」をつける教育制度という「個性」と「実力」という2つのキーワードを中心に提案をしたい。


−入試制度について−


 提案1 大学入学資格試験を行うべきである
 提案2 資格をとった後にそれぞれの大学の個性に合った選抜を行うべきである



−大学教育制度について−


<授業改革案>

  提案1 ユニークな人材によって授業の個性化魅力化を進めるべきである
  提案2 双方向の授業を行うべきである

<大学と高校、社会、大学間のつながりの改革案>

  提案1 広く大学の個性を情報公開して高校と大学のつながりを強めるべきである
  提案2 実学的な授業をとりいれ大学と社会とのつながりを強めるべきである
  提案3 大学間の壁をとりはらい大学間どうしのネットワークを強めるべきである

<卒業時の評価の改革案>

  提案1 新しく資格を増やし卒業時の資格によって学生を評価すべきである


おわりに


 学歴社会は時代とともに変わりつつある。現在またはこれから行なわれる様々な教育改革によって,学歴という肩書きよりも個性や実力が重視される社会へと徐々に移っていくはずである。10年後の入試制度,教育制度は現在のものとは大きく変わってくると思われるし,またそれを望みたい。


主要参考文献


加藤寛(1992)「慶応湘南藤沢キャンパスの挑戦」東洋経済新報社
小宮山博仁(1993)「学歴社会と塾」新評論