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早期教育が幼児の発達に与える影響と今後の在り方

The Effects of Early Education on Development of Children and How It Should Be



プロジェクト名:学びを支援するツールとしてのマルチメディア

9551196 須森 りか
鈴木 克明教授指導

はじめに

第1節 はじめに

 社会問題にまでなってきている早期教育。人間の基本的人格が作られる乳幼児期に行われる教育は、人生最初で最高に重要な教育である。早期教育機関は育児不安に悩む母親に、子育てのマニュアルを教材という形で提供している。しかし、早期教育に反対する人、あるいは早期教育に疑問点を抱いている人達もいる。本論では、早期教育の実情を見つめ、問題点を挙げ、今後、幼児期の教育をどうするべきかを考えていく。

第2節 早期教育とマルチメディア

 インターネットで早期教育を検索したところ、育児に悩む母親達の掲示板があった。気軽に、相談を持ちかけられる場というものができ現代に置いては画期的なことである。これからのさらなるマルチメディアの進歩により、教育もさらに可能性がひろがるであろう。

第3節 研究方法

 本研究は、文献とインターネットを使った文献研究である。まず、仙台市内にある幼児教育機関を電話帳で検索した。早期教育の実情をより近くで見るために、その検索した幼児教育機関に電話をし、見学させてもらえないか交渉した。ステップ知能開発教室を見学しまとめた。東北大学、宮城教育大学、宮城学院大学の図書館に足を運び、教育という視点で早期教育についての情報がないか探した。国会図書館に出向き、雑誌検索からさまざまな情報を得ることが出来た。インターネットの検索ツールの「goo」で、早期教育を検索し、目を通した。ホームページの著者に電子メールで問い合わせ、情報を得ることが出来た。書店でデータベース検索をした。


第1章 早期教育とは

第1節 早期教育の定義

 無藤(1998)、小宮山(1995)、および汐見(1996)などを参考として、本論では、「胎児から小学校以前の教育で、できるだけ早い時期から開始するという志向性を持ち、知的な教育、主にIQを高めることを意図し、働きかけに対する子どもの期待される反応を強く期待して行われる、幼稚園や保育園を除いた教育」と定義づける。ここでは、お稽古ごとや、スポーツ教室は除外する。これを踏まえて、以下の論文を記す。

第2節 早期教育の変遷

 早期教育の変遷を、毛利・山田(1994)の『ちいさいおおきいよわいつよい』を参考に述べた。


第2章 早期教育の実例

第1節 ステップ知能開発教室

 ステップ知能開発教室を見学した。ステップ知能開発教室は2歳児から小学6年生までを対象としている。英才教育研究所で開発しているギルフォード知能構造論に基づいた知能開発教材を使い、暗記などに偏らず、脳のいろいろな部分に刺激が与えられるように工夫しているそうだ。知識を得ることよりも、考える能力を優先し、公式などを覚えることよりも問題を解いていく過程を重視している。

第2節 公文式

 無藤(1998)の見解で、公文式の特徴を述べる。毎日一定のプリント学習をすることで、学習習慣を身につけることができるが、学習がプリントの枚数を消化することと等しくなっている。公文式では、計算の技術や文字の読み書きを早期から教育することには成功している。手順を順序良く徐々に覚えて行くことは子供にとって簡単であるからである。しかし、そのような手順の習熟が深い理解をもたらすかどうかは疑わしい。数学の理解を促す活動は見られないし、文字の読み書きが本を楽しみ、かつよく読むことにつながるとも言い難い。しかし、本に接する機会を導入するということは無意味ではない。

第3節 その他の方式

 その他の実例としてドーマン式幼児開発法、スセディック式胎内教育法、三石式早期才能教育法、井深理論によるEDAペア・スクール、七田式早期教育、家庭保育園、こどもちゃれんじをまとめた。


第3章 早期教育側の考え

第1節大脳生理学に基づく早期教育の効力

 才能逓減の法則とは、教育は早く始めるほど高い能力が育ち、才能が伸びる可能性は年齢とともに急速に減っていくというものである(.村松・吉木、1990)。

 右脳の働きが活発なのは幼児期で、0歳に近ければ近いほど高度の能力があり、学習意欲も旺盛であると考えている。右脳には、たくさんの能力が隠されており、開発できるのも、右脳優位である、3歳までが決め手になるのだという(七田、1993)。

 脳が、急速に発達する3歳までの間に、外からの刺激を受け止め、パターン化し、記憶するという最も基本的で重要な情報処理の仕組ができる。また、右脳の働きも、3歳までの間がもっとも活発である。どちらにも才能逓減の法則が当てはまる。早期に教育することで、幼児の才能を最高にひきだせるとしている。

第2節 早期教育の教育内容

 幼児の脳に刺激を与えるのには、カードを使うことが最良である。カードの使い方は、一枚一秒の間隔でパッパッとめくって見せていく。すると、この速さに左脳はついていけないので、引っ込んでしまい、右脳に働きを任せる。すると、子供たちが生来持っている右脳の働きが優位に働くと説明している。

第3節 知能因子を刺激する教育法

 この知能構造論に基づいての教育法は、言葉や文字の暗記などのひとつのことに偏らず、脳のいろいろな部分に刺激が与えるので子供の知能が全脳的に開発されるといっている。

第4節 親子関係の深まり

 早期教育をすることは、子供への働きかけの時間が多くなるので、以前よりも子供とのふれあい、スキンシップが増えて、親子関係が深まると主張している。

第5節  IQ140以上の子供が育つ

 家庭保育園では、独自の教材、育て方により、IQ140以上の「天才児」が75.3%の確率で育つという。IQの高いひとは幸せになるといっている。


第4章 早期教育反対派の意見

第1節 遊びが無くなることの弊害

 遊びを体験しなかった幼児は、体力がつかず幼児同士のコミュニケーションがないので社会性や協調性も育たず、他人の気持ちが理解出来なくなる。遊びに熱中した経験がないと、集中力も育たなくなる。

第2節 自主性の抑圧

 山口(1994)は、早期教育で受動的な学習をしている幼児は、自発性、創造性の領域の発達が抑圧されるのではないかと懸念している。幼児は、親からの評価を気にして親の期待に沿おうと努力し続けてしまうという「依存的」なパーソナリティーが育ってしまう (高良、1996)。自主性が無く、依存的な性格では、自分で自分の道を切り開いて行くことは出来ない(小宮山、1995)。

第3節 本当の賢さとは

子供たちはその年齢にふさわしい形で、対象に主体的・能動的に働きかけていく存在にほかならない。自分が体験したさまざまな事実を、自分なりの論理でつなげ、それらのあいだに共通性を見つけだし、自分なりの「主観的な概念の枠組み」を形成しながら、知的能力を伸ばしていくのである。賢さの本質はこの点にある(加藤、1995)。

第4節 早期教育機関が挙げている大脳生理学の「合理性」

 3歳までの脳の重さが急激に重くなることは確かである。しかし、脳の「構造」ができるだけであって、「機能」が発達するわけではない。乳幼児期には子供自身が興味をもって広義の学習活動を行うことで、その後の脳の発達に影響する。早期教育機関の教材の遊びでは、なんのために覚えなければならないのか本人の自覚がないものでは学習の効果は一時的なものになる(汐見、1996)。

第5節 人間観の欠如

 早期教育が考える「能力観」には、「人間観」が欠如している。

第6節 IQで計れないもの

 IQで計れる能力は一部にすぎないということである。


第5章 今後の早期教育の在り方

第1節 早期教育側の主張と問題点

 早期教育側の主張と、早期教育の問題点のそれぞれの議論を再度比較し、まとめた。

第2節 早期教育の今後あるべき姿

 乳幼児期の子供の発達段階を考えて、無理の無い、親と子が楽しくコミュニケーションをとれるようなものが望ましい。

第3節 幼児期にしておくべきこと

 就学前の5つの課題の提案を紹介し、自然に意欲をもって学べるように工夫する。


おわりに

 核家族化により、たよりどころの無い母親は、我が子の将来のために投資するのが親の役目とばかりに、早期教育の宣伝文句に乗せられてしまう。しかし、常に視野を広くし、先を見据える能力を身につけ、正しい情報を選んでいきたい。


主要参考・引用文献

無藤隆(1998)「早期教育を考える」日本放送出版協会
村松秀信・吉木稔朗(1990)「IQ200 天才児は母親しだい!」コスモトゥーワン
高良聖(1996)「警告!早期教育が危ない」日本評論社
山口和彦(1994)「脳は何でできているどんなもの?」ジャパンマシニスト社
加藤繁美(1995)「早期教育が育てる力、奪うもの」ひとなる書房、
七田真(1993)「赤ちゃんはみんな天才」産経新聞ニュースサービス
小宮山博仁(1995)「早期教育をまじめに考える本」新評論
汐見稔幸(1996)「現代早期教育事情」日本評論社