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生涯学習向け環境教育Web教材
「みやぎの探検98」の開発と評価



The Development and Evaluation of "Miyagino tanken'98 "
Web-based Instruction on Environmental Education for Lifelong Learning


プロジェクト名:学びを支援するツールとしてのマルチメディア

指導教員:鈴木克明教授

教養学部 人間科学専攻
9551154 玉川 綾子 




1.はじめに

 近年、環境問題とともに環境教育への注目も高まっている。最近では、環境教育は生涯学習の最も重要な課題の一つとして実践されている。

 仙台市でも、生涯学習事業の中で環境保全講座やイベントが開催され、環境教育が推進されている。

 しかし、現状を見て二つの問題点に気付いた。

 第一に、講座やイベントは日時が限定され、社会人など多忙な人は参加が困難なことである。

 第二に、講座やイベントはいずれもその場限りで終わりか、冊子の発行のみにとどまっており、学習の成果が有効に活用されていないことである。 この二つの問題点の解決案として、講座の内容を再現した Web教材開発を思い立った。講座をWeb教材として残しておけば、手軽に実際に近い形で学習してもらうことが可能になり、より多くの人に学習の機会と環境保全の意識啓発の場を提供でき、環境保全行動への参加を促すことができるのではないか。また、講座の成果の有効活用の提案として、Web教材開発を試みることにした。


2. 環境教育の背景


 1975年の国際環境教育会議で採択されたベオグラード憲章では、環境教育を「環境とそれに関わる諸問題に気づき、関心を持つとともに、当面する問題の解決や新しい問題を未然に解決するために、個人及び集団として必要な知識、技能、態度、意欲、実行力などを身につけた人々を育てること」と定義しており、日本の文部省の環境教育のねらいもこれに準拠している(澤井、1994)。

 日本の環境教育は1970年代の公害教育に発し、世界的な環境に対する関心の高まりを受けて発展してきた。1989年には小学校低学年で、環境教育のための教科ともいえる生活科という科目が新設された。

 最近では、環境教育は、生涯学習の最も重要な課題の一つとして実践されている。


3.Web教材について

 Webとは、World Wide Web(ワールドワイドウェブ)の略称である。Webならば、マルチメディア情報が扱えるため、冊子よりもより実際に近い形で講座内容を伝えることができる。また、誰でもいつでも世界中からアクセスできるため、より多くの人に、時間の制約なく気軽に学んでもらうことができる。

 以上の理由からWeb教材を開発することにした。


4.研究の内容

4-1 研究の目的

 本研究の目的は次の3点であった。

(1)モデル講座を再現した内容の、環境保全意識の啓発を目指したWeb教材を設計・開発し、形成的評価  を行うこと。
(2)教材を開発するほかに、講座の教材化の手引きを作成し、仙台市環境学習コーナー、仙台市中央市民  センターに提案すること。
(3)学習前後の、環境に対する関心・態度の変化の評価方法を提案すること。


4-2 モデル講座「みやぎの探検」

 モデル講座選定にあたっては、

(1)仙台市で実施された講座であること。
(2)生涯学習向け、特に成人期の環境教育を意図するため、対象者が原則として成人であること。
(3)成人期における環境教育の課題は、「問題解決に向けた行動に参加すること」(阿部、1993)と考え るため、それを促すような環境保全への意識啓発と行動への参加を目指した講座であること。

以上3点を重視しこれを満たす講座として、「平成10年度みやぎの探検・梅田川再発見」をモデル講座として選定した。本教材は、この「みやぎの探検・梅田川再発見」をモデルとして設計・開発した。


5.教材の設計と開発

5-1 講座「みやぎの探検」の概要

 野外学習として、梅田川の水源地〜下流域を講師の解説を受けながら散策した。移動のバス車中では、梅田川に関わる講義や環境への意識啓発につながる講義が行われた。


5-2 教材の設計

教材の全体構成は、図1に示す通りである。


図1 教材の全体構成図

 講座においての講義部分は「2.知りたい!梅田川」と「4.大事にしよう!梅田川」で再現する。

 講座の野外学習部分はメニュー「3.探検しよう!梅田川」で再現し、散策場面を撮影した写真とビデオを用いる。「マップで探検コース」を選択すると、地図をもとに散策画面1から始まり、散策画面6で終了する(図2参照)。「場所を選んで探検コース」では、見たい場所を選んで散策画面を見ることができる。


図2 「マップで探検コース」の画面

「5.梅田川ご意見板」では、メール送信フォームや掲示板などを設置し、Webの特長を生かした。


5-3 教材の開発

 本教材は、文字データ、写真、ビデオ、音声などのマルチメディア素材を収集、使用し、WWW上で閲覧可能なHTML方式で開発した。(http://www.edutech.tohoku-gakuin.ac.jp./personal/zemis/tanken.h/title.htmlにて公開試用中である。)


6.教材の評価

6-1 形成的評価

 モデル講座の企画者2名に教材を試用してもらい、形成的評価を行った。形成的評価は、本教材、前提テスト、事前・事後アンケート、教材改良アンケート、観察プラン、経過時間記録用紙を用いた。

6-2 意識変化の評価への提案

 環境保全の意識啓発というねらいが達成できたかを確認する評価方法を次のように提案する。

6-2-1  事前の評価

・事前アンケート<自己評価>
 梅田川についてどのくらいの知識・関心をもっているか、梅田川に対する意識度チェックをはかり、事後の評価での比較材料にする。

6-2-2 学習過程の評価

・梅田川レポート<作品分析>
 こちらで用意した書式の「梅田川レポート」の前半部分を、教材で学習しながら作成してもらい、観点別チェックリストで評価する。

6-2-3 事後の評価

・事後アンケート<自己評価>
・梅田川レポート<作品分析>
 事前アンケートとの比較のほか、「梅田川レポート」の後半で教材で学習したことや感想・意見などを記入・作成してもらい、観点別チェックリストでの作品分析を行う。


7. 講座の教材化の手引き作成

 Web教材の設計の仕方や開発環境などの詳細を冊子としてまとめた。


8.おわりに

 本研究では、モデル講座「みやぎの探検・梅田川再発見」をWeb教材化し、また、教材の効果を確かめる道具も準備した。

 今後の課題としては、公開後の反応をもとに、この教材の評価を行うことがあげられる。


参考文献


澤井安男編(1994)「分権化時代の地球環境政策」 ぎょうせい

阿部治編(1993)「こどもと環境教育」東海大学出版会