メディア論(担当:鈴木克明)00.8.11
グループ作品「メディア論重要キーワード5解説」
キーワード1:スピンオフ(SPIN OFF:技術波及)
定義:
もともとは宇宙進出の為に考え出された新しい技術が、単に宇宙開発だけで終らずに、私たちの生活の様々な場面に生かされていること。おもに、1958年に設立された米航空宇宙局(NASA)での技術開発が多い。
事例と解説:
医療
- レーザー技術
アポロ計画のとき、地球と月の距離を正確に測定するために開発された。
医療機器、照明機器などで利用されている。
スポーツ
- バスケットボールシューズ
スペースシャトルの宇宙服の応用。
足への衝撃が少なく、ジャンプ力の高いシューズが開発されている。
- ハングライダー
ジェミニ宇宙船やアポロ宇宙船の回収システムの研究から生まれた。
ロガロ・ウイングという、空を降下するときに受ける空気流の抵抗から浮力を発生させ、降下速度や飛行方向をコントロールしながら目的地に着地する滑空飛行(かっくうひこう)システムがスポーツ用に発展したもの。
- ゴルフボール
ゴルフボールの表面にあるディンプルの(半球状の窪み)大きさや深さなど形状の研究に、スペースシャトルの外部燃料タンク(ET=External
Tank)の空気力学特性を解析した、3D(3次元)や3DCGS(コンピューター・グラフィック・シュミレーション)などのコンピューター数値解析システムが使われた。
ゴルフボールの表面にディンプル(半球状の窪み)をつけることでボールは正確に良く飛ぶようになる。結果、3種類の大きさのディンプルを500個持った、飛行力の高いゴルフボールが開発された。
電化製品
- コードレス製品
スペースシャトルの塔乗員どうしの通信システムとして開発されたワイヤレス交信システムの応用。
テレビのリモコンなど様々なものが商品化。
通信・コンピュータ
- IC(集積回路)
コンピュータの高性能化、小型化が実現した。
- カーナビゲーション
地上でも海上でも空でも、すぐに位置を測定できる、
全地球測位システム(GPS)という技術から生まれた。
自動車の走行位置を特定するカーナビの他、測量や気象観測にも利用されている。
- VR(バーチャルリアリティ)
NASAは、このVRを利用して仮想環境ワーク・ステーションを開発。センサーつきの手袋を使って、ロボットや探査機などの遠隔操作や、船外活動をしている宇宙飛行士に指示を与えるなど
の訓練を行っている。
また、3次元の科学的視覚が可能になり、航空機の開発や建築設計のときなど、完成前の設計の検討や変更が可能というように、その用途が広がっている。
新素材
- サングラス
NASAジェット推進研究所(JPL)の太陽エネルギ−研究部門で、スペースシャトル・船外活動用宇宙服のヘルメット用サンバイザー(太陽光線避け)のために、放射防護レンズ(RBL)が開発された。
サングラスのほかに、医療用眼鏡レンズ、スキー用ゴーグル、除雪地域用車両のフロントガラスなどさまざまな製品に利用。
- セラミックス
セラミックスは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射されて、地球の大気圏外に出てから再び大気圏に突入するときに発生する高熱で、
ICBMの頭部が溶けて燃えないように開発された素材である。
工具やエンジン、電子部品、セラミックスのはさみや包丁、ナイフなどに広く使われている。
また、NASAの人工衛星の搭載カプセルにも応用された。
環境
- 浄化装置
NASAは、アポロ宇宙船飛行士の飲料水のために、水を殺菌してきれいにする水質清浄装置を開発した。宇宙船の中では、水は大変貴重なので、そのほとんどをリサイクルして使うためである。
この水質清浄装置の技術は、家庭用の水道水の浄化装置のほか、プールや温泉の水の再生に利用されたり、池や小川の汚れの浄化や大規模な水の保存施設などに利用されている。
- ソーラーエアプレーン
NASAが開発した太陽電池を利用し、太陽熱のエネルギーを動力源とするソーラー・エアプレーンは、環境にやさしい太陽電池飛行機である。
将来的には、無人地球観測飛行機を開発して、2000年頃から、地球の降雨量や日照量の測定、嵐や洪水の災害、森林火災などの監視をおこなう予定。
自動車
- 電気自動車
電気自動車は、ニッケル水素電池などの電気自動車用蓄電池により、電動モーターを動かして走る。この電気自動車用蓄電池は、アポロ宇宙船の予備電源として搭載するために開発されたものだった。
電気自動車の技術は、車椅子や、空港で旅客や手荷物を運ぶパッセンジャー・ローダー、ゴルフ場のカートなどにも用途が広がっている。
- エアバッグ
小さく折りたたんだパラボナ・アンテナや構造物などを宇宙空間で膨張させて展開し、短期間につくるNASAの技術に、インフレータブル(膨張)・エアバッグ式がある。
これを改良し、自動車が衝突したときに、瞬間的にふくらんで、乗っている人間に対する衝撃を減少させる自動車用エアバッグである。
参考文献:
宇宙情報センター「スピンオフ」
http://spaceboy.nasda.go.jp/note/Spinoff/J/Spn_j.html
担当:加藤千恵
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